所得税の不思議なお話し①
本日のお話しは、またちょっと難しいお話。
長文で法律条文や法律用語も出てきますので、興味のある方だけご覧になって下さい
確定申告ネタではありませんが、所得税がらみのお話しを
遅くなりましたが、1日の記事で予告していた続きのお話し。
個人事業では、よくある話。
個人事業主Aが父親Bの所有する土地の上にA名義の建物を建てて、父親Bに地代を支払いながら、パン屋さんを経営していて、生計を一にする(同じお財布で生活していると考えて下さい)妻&自分の父親母親がいる前提で。
父親Bに支払った地代をAの事業所得の計算上「地代家賃」として必要経費に計上している。
さて、この処理は正しいのでしょうか?
アンサー、生計を一にする親族(この場合父親B)に支払う対価(地代)はAの必要経費にできません
所得税法上、個人事業主Aが他に支払う給料、家賃などは、原則として必要経費に算入できますが(所得税法37条)、
その支払いを生計を一にする親族に行う場合等には、その支払を個人事業主A側で必要経費に算入できず、
同時に、生計を一にする親族側では所得が生じなかったものとみなされます。
不思議ですね・・・
所得税法って、個人単位課税じゃないの?何で同一世帯間って考え方をするの?と疑問が生じますが・・・
実は、家族や親族といった特殊関係間で、恣意的な所得移転を行い租税回避を防止するために、所得税法第56条に、このような取扱をうたっています。要するに世帯間課税の考え方も取り入れています。
ここで、所得税法56条を紹介します。
所得税法第56条 (事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
懐かしい・・・
こんなんを全部暗記しました
このブログをご覧になっていらっしゃる、税理士受験生も沢山いらっしゃいますので、ちょっとだけ脱線
この56条も受験時代、暗記していたので、今でもすらすら言えます
自分=法規集の要所要所を集約したロボット?のようなイメージ・・・
条文が頭の中に入っています・・・全然忘れていません・・・
そして、1税目分厚いテキストを暗記して、こんな条文を数えきれないほど、それを3科目も暗記したのです・・・
今となってはもう無理
税理士になるには、あの試験を勝ち抜くには、これくらいのレベルまでもっていかないと、本試験で力を発揮できません。
そして実務をやる時に、受験時代に暗記した努力は無駄になりませんよ活かされます
受験生の皆様頑張って下さい
そして、
この取り扱いに関し、有名な判例がありますので紹介します
(数字は適当な数字入れています)
弁護士である夫のA(個人事業主)が「生計を一にする」妻・税理士B(個人事業主)に確定申告書の作成を依頼し、その報酬30万を支払っている場合、その30万を弁護士A側で必要経費算入することはできません。
一方、妻である税理士Bでは報酬30万は生じないものとみなされ、この30万に係る課税関係は生じない。
ということ。
ふむふむ・・・
この判例は、世帯単位課税の考え方により、結局のところ、世帯単位の所得は変わらないため、このような取扱&課税関係になります!
例えば先程の個人事業主Aが生計を一にする父親Bから店舗用敷地を無償で借りているような場合に、父親Bが店舗用敷地に係る固定資産税を20万負担しているのであれば、個人事業主A側で20万を必要経費に算入し、父親B側では20万の負担をなかったものとする取り扱いもあります(所得税法56条、所得税法基本通通56-1)。
保険料なども同じです。
長くなったので、このあたりで①は終了。
お次は例外としての特例を紹介させていただきます
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この記事を書いた人
愛子先生
札幌市で4児のママ税理士として、愛子税理士事務所を経営しています。法人・個人事業者の顧問はもちろん、相続税をはじめ資産税もオールマイティーに対応しています!